フィカへ

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ダイブマスターのトレーニングで母国マレーシアからインドネシアのウェー島にやってきたあなたと出会ったのは、2016年7月のことでした。あれからもう8年が経とうとしています。

あなたは私が返してもらうはずだった20万円を持ち去りました。みんなで一緒に買ったダイビングの器材代。私がルイーズをメダンの病院へ連れて行っている間に、私が立て替えていた分をみんなから集めて持って行ってしまいましたね。

最初に言っておきますが、私はあなたに対して怒っているわけではありません。そもそも、これは全部私の責任です。あなたを信じて回収を任せると決め、あなたが私を簡単に裏切れる事状況を作ったのは他でもない私ですから。あなたのことは友達と思っていたので、悲しくなかったと言えば噓になりますが、自分に呆れた記憶のほうが強いです。

その年の12月、あなたが詐欺罪で逮捕されたと聞いた時は驚きました。被害者数は少なくとも27名、被害総額推定197,088,000ルピー(約180万円)。マレーシアだけでなく、インドネシアの各地でも私の時よりもっと巧妙な手口で人を騙していたのですね。

当時は、もっと早い段階で、あなたの口座が凍結している可能性に気付けなかったことを悔やみました。マレーシアの見知らぬダイブショップから「あなたのショップにいる女性のことで即連絡を取りたい」というメッセージが送られてきたことがあったのですが、あれも無視するべきではありませんでした。あのメッセージに応じていれば、あなたがマレーシアにいられなくなってインドネシアに来ていることが分かったはずです。そうすれば、あなたと私が詐欺師と被害者の関係になることも防げたでしょう。

その後、インドネシアのサバン警察から連絡が来て、裁判をするにあたり被害者の数は1人でも多いほうがいいので登録に来てほしいと言われましたが、私は行きませんでした。その時はタイのダイブショップで働いていましたし、あなたに関することでもうお金と時間とエネルギーを使いたくなかったからです。

裁判の結果は知りません。知る必要もありません。でも、私にはどうしても腑に落ちないことがあります。あなたはなぜ、お金が返せないと分かっていながら、7月から3ヶ月も私と連絡を取り続けていたのでしょうか? 最初から返すつもりがなかったのなら、お金を持ち去った時点で私と縁を切ればよかったのではありませんか? あえて2~3万円だけ返す必要もなかったのではありませんか? 結局全部、これが詐欺ではないことを私に信じ込ませるためのパフォーマンスだったのかもしれませんが、正直そんな風には思えないほど、あなたは一時期とても必死に送金を試みていました。

これは私の推測ですが、あなたはあの小さなダイブショップの仲間たちが本当に好きだったのではないでしょうか。アンディやアクマルやアティムと一緒にいる時のあなたは、本当に楽しそうでした。その一方で、あなたは私を格好の餌食として見ていたはずです。日本円とクレジットカードを持っていたわけですからね。でも、もしかしたら、ほんの少しだけ、私のことも純粋に仲間として見てくれてくれた時があったのではないでしょうか。

その答えは一生分からずじまいで構いません。私は、あの日の自分を悔やんだり責めたりせずに今日も笑って生きてますから。それよりも気になるのは、当時24歳だったあなたの今です。

フィカ、あなたは今、どこで何をしていますか? あなたがまだ詐欺師でも、そうでなくても、この広い空の下で笑っていてくれることを祈ります。